多読で磨く英語: “Execution” は死刑執行だけじゃない

第10話

多読で磨く現代英語のセンス: “Execution” は死刑執行だけじゃない

今回は、英語の多読方法について述べますが、結論は「文芸物に行く前に現代実用英語を多読し英語センスを磨くことが重要」だということです。

多読のプロセスとしては以下の順序を踏むと効率が高いです。

1)要求語彙レベルが低い教材

2) 時事英語 (日本発のものを除く)

3)ビジネスや一般教養書

4) 文芸物

文芸物を最後にしましたが、この点過去の自分の学習法に関する反省があります。筆者は3の「ビジネス・一般教養」書に挑戦するより先に4の「文芸物」に取り組んでしまいました。

ちなみに、昭和時代に英語の多読にお勧めとされた代表作は以下のような小説でした。実際に読んだ記憶があります。

老人と海」、「1984年」、「そして誰もいなくなった」、「不思議の国のアリス」、「O ヘンリー短編集」、「トム・ソーヤーの冒険」、「動物農場

しかし語彙・表現の平易さや実用性を考慮すると、上記のような文芸作品ではなく、「ビジネス・一般教養」書にまず注力すべきだったのです。後年気がついたわけですが。

実は、日本の英語学習者の弱みは、文芸物への偏重にあるいうのが筆者の持論(英文科出身ながらあえて言いたい)です。「ビジネス・一般教養」書を多読して一般的な現代英語に習熟する。それが実用英語マスターへの近道です。

ところが日本の場合、歴史的に英語は英文学を通して学ぶという傾向がありました。明治時代以来のものです。その弊害としては、現代実用英語の習熟度が不十分な事例が見られるという点が挙げられます。

少し極端な事例があります。ある英訳案件で、実行するという意味で “execution” という訳語をあてたのですが、チェッカーから「なぜここで死刑ですか」という物言い。文芸物偏重の学習の犠牲者かと思いました。実際には、”execution” には「死刑」以外にも「実行」という意味もあり、たとえばサッカーの実況でも “His execution was poor” (「イマイチのプレー」) などとよく言います。

なお、上記の見解は「日本の英語教育が文芸に偏重している」という意味ではありません。中学英語の教科書をみて分かる通り、今の英語教育は会話および短文が中心です。全然文芸偏重ではないです。なおかつ、日本文化の紹介を重視するという奇妙なものとなっています。外国語とそれを取り巻く文化を学ぶという当然のことを放棄した形です。

悪化する一方に見える日本の英語教育には何も期待していません。筆者が今回問題視しているのは、学習者の文芸物偏重の傾向がいまだに続いているという点です。心ある英語学習者が多読の対象を探す際に、「まず英米の文芸作品から」といって進める向きが多いということです。

最後に、1段階の「要求語彙レベルが低い教材」および2段階の

「 時事英語」(日本発のものを除く)について、以下のようにまとめました。

まず、多読方法ですが、自分自身の語彙力レベルにふさわしく、内容に興味が持てるような本を選ぶことがとても大事です。中学英語の文法をマスターした人の場合はまず300-600単語レベルからスタートして、その後徐々に水準を上げていきます。

多読用の本は今や種類豊富で「多読者天国」の状態です。これも多読の効果を認識する人が増えたおかげだと思われます。

筆者は高校生時代に多読を始めましたが、昭和時代ですから入手できる中級者向け多読用教材は限られていました。ごく一部の書店でYohan Ladder Seriesという教材並んでいましたが、せいぜい30種類程度に過ぎません。あとは海外出版社による語彙2,000語シリーズを見つけては読むという日々でした。

代表的な教材を以下列挙します。

ペンギンリーダーズ

レベル1:300単語

レベル6:3,000単語

https://www.amazon.co.jp/Penguin-Readers-Level-AUDREY-HEPBURN/dp/1405876980

 

マクミランリーダーズ

http://www.mlh.co.jp/readers/

 

ピアソン・イングリッシュ・リーダー

https://www.pearson.co.jp/catalog/pearsons-graded-readers.php?lang=ja

 

語彙3,000語程度の本が読めるようになったら、教材ではなく、英語の新聞・雑誌にも挑戦すべきです。ただし日本の英字新聞はお勧めできません。日本語を英訳した記事も含まれていますが、一部日本的な表現が見られるという問題点があります。どうせ時事英語を読むのであれば英米メディアの記事にすべきです。ネット上でかなりアクセスできます。