「弱く話してください」英語発音はピアニシモで

第6話

「弱く話してください」英語発音はピアニシモで

今回は、「軽く音読」することの大切さを説明します。まるでささやくように弱く発声すること(いわば「ピアニシモ発声法」)が英語発音学習のコツだというのが結論です。

弱く話す方が発音をコントロールしやすいことに気がついたのは、大学での同時通訳訓練の最中です。ヘッドセットの片側から聞こえる英語を日本語に同時通訳する練習ですが、ささやき程度の発声にしないと英語が聴き取りにくいこともあり、ピアニシモ発声の習慣がつきました。

ピアニシモ発声法の効果が出たのは、サークルでの英語朗読発表会の時でした。各人英語小説の朗読をするのですが、通常よりも声のトーンを落とした朗読をした結果、「発音きれいでびっくりした」と発音上手な女子部員から褒められた記憶があります。あくまで著者の普段の英語発音に比べてということだったでしょうが、ピアニシモ発声の効果を示したエピソードでしょた。

余談ですが、ある日クラシック音楽茶店でレコードを聴いていると、話に夢中になった3人の客のところへ店長が行き、「もっと弱く話してください」とお願いするのを目撃しました。音楽関係者は、会話もピアニシモにするという感覚があるようでした。

実は上記の体験よりかなり前から、ピアニシモ発声法の効果を無意識に体験していました。小学生高学年の頃、英語の歌のレコードを聴きながら真似をするわけですが、小さな声でないと英語の音がうまく聴き取れません。今思うと必要に迫られてピアニシモ発声になっていたわけです。

「英語の歌で英語の発音がマスターできる」というと誰も信用しないかもしれませんが、実はかなり効果的な学習法です。当然教材は厳選する必要があります。発音がはっきり聞き取れる1960年代までのスローなフォークソング、ポップなどに絞られます。気に入った曲を繰り返し聞く、聴きながら歌詞カードを見ながら口ずさむ。発音がある程度真似できてこそ歌えるわけです。

後年大学の音声学の授業で学ぶ音素に関して、既に小学生時代に実践をしていたわけです。たとえば ”d” の発音は語頭と語尾で異なることがあるということは英語の歌を真似る過程で気がつきます。例えば、

"Love me do"の "d" 

"Long and winding road"の”road" の"d"

は明らかに違いますね。

そうやって日々英語に接していたため、中学英語の音読は苦痛でした。現実の英語発音と大きく異なる発音で朗読するわけですから。

学習者は中学英語により日本式発音を刷り込まれています。また、大きな声で読みなさいと指導するために、ピアニシモ発声効果を享受できない形になっています。

余談ですが、ある日実務同時通訳の光景を目の当たりにしました。ある企業の決算説明会の場ですが、外国人投資家の隣に座った女性通訳者が英語に通訳していました。やはりピアニシモ発声法のささやき通訳でした。

学校英語の音声面でのもう一つの問題点は、発音を口の形で教えようとすることです。理論に沿った正当な方法でしょうが、経験上その弊害らしきものを見てきました。具体的には、 “th”の発音をするときに舌を見せる人がいます。学校での指導の影響でついてしまった癖のようです。これについては、舌見せの必要はないと指摘する米国人がいました。

著者は口の形で発音を学習するのには反対です。英語耳を鍛えて音声を再生する努力したほうが効果的で、弊害も発生しにくいと経験上思います。

英語音声学習について専門家には理論もあるでしょうが、以上が経験を基にした著者の結論です。

いずれにしても、英語学習者の皆さんには以下の点がお勧めです。

  • ネーティブの録音音声を大量に聴きピアニシモ発声法で真似る
  • 英語の発音に慣れる手段として一般教材のほか、英語の歌も活用する(数百回聴いているうちに発音の特徴に気がつく、真似ができるようになる)
  • シャドーイングをする際もピアニシモ発声法を意識し自分の音声をコントロールする