植民地経営は「偉業の達成」?

植民地経営は「偉業の達成」?

結論:英国の植民地経営に関しては肯定派もいるが、その成功の原動力は、徹底的な現実主義、妥協主義、拝金主義の力、ならびにスコットランド経営等による「練習効果」だった。

印象に残った会話がある。英国の旧保護国だった中東の地で、英国人の駐在員同士が談笑。植民地経営や付随するインフラ開発に関して、「自分たちの先祖はあんな偉業を達成したんだ」というやりとり。その国の近代化に貢献したことを高く評価する様子。植民地化に対する肯定意識が強いのに驚いた。これが一部の英国人の本音かと。

その後ロンドン駐在員になったが、小学生の息子から、なぜイギリスの道路には舗道があって、なぜ日本にはあまりないのかと聞かれて困った。とっさに出た返事は、「前者は世界中に植民地を作りその儲けがあったので、国内インフラにお金を使えたが、後者は世界を支配できなかったからああなった」と、乱暴なものになってしまった。

後年その反省もあり、英国の植民地経営について知りたくなり、下記の原書を読んでみた。

The Rise and Fall of the British Empire (Lawrence James)|

何が英国の植民地経営の成功の原動力だったのか、という点に注意して読み進めた。そこで認識したのが、徹底的な現実主義、妥協主義、拝金主義の力。その他の主義主張、倫理観、プライドにはこだわらない方針だった。600ページもある本だけにそれらについて詳細な記載があった。

加えて気がついたのは、それらの主義の背景にあったのが、スコットランド等の植民地化を通じてじわじわ習得した独特の経営・懐柔ノウハウだった、という点。現地の文化等に関する深い分析も不可欠だったはず。

他の諸国同様に、英国も貴族や商人が庶民を搾取する社会だった。その搾取の対象範囲を段階的に拡大したプロセスが本書を通じてよく理解できた気がする。

現代の英国に関連して知るべきことはたくさんあると認識するに至った。

先ほど触れた子供への答えは特に訂正を要しないことがわかり、ちょっとホッとした。

今後も英国についての私見について述べていきたい。