英語内在化の手引き

第4話

アウトプットすることを意識してインプットする ~ 内在化

どうしたら効率的に英語が学べるか?中学生時代に気がついたのは、常にアウトプット(話す・書く)を意識してインプット(読む・聴く)することです。そうすることで言葉に対する注意力が増し、習熟度が高まります。普通の人の場合、テストで高得点をあげるためのインプットなので、テストに関係ない要素についての関心は低いです。

この方針の実践方法が、前回説明した「4要素同時学習」です。読みながら英文を書く練習をしていくと、結果的に文法・語彙が完璧になってきます。残りは後からついてくるとはこのことです。

以下が、今回の練習例です。

教科書:

One day, when George was walking home from work, he stopped on the bridge. A white ship going to Venice passed slowly under it.

私:

上記の文章をノートに書取りながら、軽く音読(注)する。

One day, when George was walking home from work, he stopped on the bridge. Then, a white ship going to Venice passed slowly under it.

この文章を基にして、下記のような簡単な英作文をする。自由に単語を入れ替えて何度も繰り返す。

Yesterday, when George was walking home from work, he stopped on the bridge. Then, a big ship going to New York passed under it.

Last week, when I was walking home from work, I stopped on the bridge. Then, a ship passed under it.

Today, when he was walking home from work, he stopped on the bridge. Then, a ship passed under it.

Today, did you walk home from work? Did you stop at the train station?

いま3回同じような文章を書きました。すでに “walk home from work” のフレーズに慣れたことに気がついたでしょうか?単語単位ではなく、このようにフレーズ単位での蓄積が有効です。英会話の時にこの蓄積が役に立ちます。”…stepped on the bridge. Then, a ship passed”のフレーズにも慣れました。自分の知っている単語を活用して同様の文章をあと3つくらい書いみようかという気になるものです。

自分の知っている単語を活用するということは非常に大事です。言葉は実際に使って見ることで、その言葉をより強く自分のものにできるからです。いわゆる内在化です。

内在化(internalization)とは、かつて音読の重要性を唱えていた権威国広正雄氏が使っていた言葉ですが、その概念にプラスアルファを加えたのが「四要素同時学習法」です。

なぜプラスアルファかというと、ただ音読するだけだと人間の脳は退屈してくるからです。国広氏の著書に感銘して音読に時間を費やしましたが、本音は「ちょっと退屈」。

そこで退屈するどころか、自分の工夫や遊び心を重視した、「楽しむ英語学習」を考案したのです。単語、時制等を入れ替えて作文・音読をすることで脳が活性化してくれます。

以上のような学習法を中学・高校と継続しましたが、その具体的な効果は大学入学直後に現れました。ESSに入部して英会話を始めましたが、いきなりよどみのない英語を話すことができました。文法上の間違いはゼロです。それまで英会話の訓練は一切受けてない新入生がなぜ。と不思議がられました。なぜなら、新入生の場合は、通常文法的なミスが目立つからです。

次回以降のブログではさらに事例をあげていきます。

(注)軽く音読:小さな声で音読することは音声学的に大事です。この点については次回以降言及します。

英語あれこれ

このコーナーでは、英語や英語学習にまつわる様々な話題についてつぶやいていきます。

  • 英語入試改革にどう備える

英語の四技能を求める英語入試改革が波紋を呼んでいる。教育産業界は新しいビジネスチャンスの到来を期待している。学生側としては、「話す・書く」の負担が大きく、新たな訓練が必要となるからだ。ただ、アウトプットには自学が重要なので、その方法に関心が集まる可能性がある。

  • 四技能に関してお勧めは「四要素同時学習法」

四技能対策はとても大変だ。なぜなら今までの4技能対応の動きは非常に稚拙だったから。会話中心の中学英語教科書に切り替えるという愚策をみて分かる。会話練習は「話す・書く」のスキルアップにはつながらない。大量のインプットを行うことが「四技能」習得の基礎だが、それを知っているのは体験者のみかもしれない。そして役人・教育者のほぼ全員が非体験者であろう。

シャドーイングが新しい学習法として喧伝されているが、その弊害面についての議論は聞かない。同時通訳の訓練の一環としての体験があるが、一つ目の弊害は、正しい音の迅速な再生が目的であり、それをこなそうとすると意味に対する注意が低下する。二つ目は、そのような背伸び状態でやるため発音の精度が低下する。聞きながら正しい音を出すのは至難の業。学生にシャドーイングを進める教育者はこのような弊害を認識すべき。

上記のような弊害にもかかわらずシャドーイングにも使い道はある。それは「リズム感」。弊害をもかかわらずそれを得るには、口を閉じたままシャドーイングをする。すると脳は、英語のリズム感に慣れてくる。鼻歌によって歌に親しむのと似ている。