英語内在化:原書一冊を一年間繰り返し聴く

第12話

英語内在化:原書一冊を一年間繰り返し聴く

今回は、一つの試みとして行った学習法のご紹介です。2010年代に入り翻訳者として忙しくなり、原書を読む時間が減ってしまったころですが、対策として一度読んだ原書を何度も何度も繰り返し聴くというメソッドを用いてみました。

使ったのはFreefall (Joseph E. Stiglitz) です。リーマンショック前後からの金融危機について幅広く論じた本です。90年代後半のアジア金融危機の後に出た Making Globalization Work を読んで、著者の洞察力に惹かれた経緯もあり、 本書を選びました。全文を朗読したオーディブックが手に入ることもこの本を選んだ理由の一つです。

約一年間にわたり数十回もこのオーディオブックを聴いたわけですが、英語の内在化にはすこぶる効果があったように思います。経済学者スティグリッツ氏の文体に慣れたばかりか、似たような英文が書けるような気がしてきました。この文体は英訳する際にも活用できたと思います。

その後同様の学習に使ったのが、同じ著者によるThe Price of Inequalityです。本書についても全文朗読のオーディオブックが入手できます。

ちなみに子供のころ夏目漱石の小説を読んでいる時期がありましたが、当時の私の日記は、漱石の影響を受けた表現が多かった記憶があります。同様の効果を狙ったのが上記のアプローチだったわけです。

同様のことをクルーグマンの End This Depression NOW! についても行ったのですが、スティグリッツの著書に比べ表現が平板な感じでした。よって聴く回数はさほど増えませんでした。